パルス超音波と核生成サイト供給のための粒子添加を組み合わせることで超音波化学反応の高効率化を実現するとともに、高音圧振幅下で発生する反応効率低下やアルコール添加時の濃度に応じ変化する反応効率の機構を解明する。アルコールは溶液中の超音波による核生成に影響を与える物質の一つであり、今回、溶液中の超音波による核生成に溶存気体濃度が与える影響を、アルコール添加条件下での音響発光測定により検討した。このテーマで実施した溶存気体濃度を変えながら行う実験は溶液調整に熟練を要した。従来報告されていたアルコール添加による音響発光増大効果が脱ガスとともに低減することを解明した。261kHz超音波を水溶液に照射し、溶存気体濃度が音響発光強度に与える影響について、超音波パワーや揮発性であるエタノールの添加濃度を変えて検討をおこなった。 比較的低い投入パワーでかつ高い気体濃度の場合、低濃度のアルコールを添加した液は純水のときより高い発光強度を示すことを明らかにした。この、エタノール添加の純水に対する発光強度増強効果は、超音波の照射時間が経過するとともに減少した。この理由を次のように考察した。照射時間経過とともに純水での発光強度は上昇する一方、エタノール添加液では発光強度はほぼ一定あるいはわずかな減少を示していたためである。比較的低い投入パワーでは、純水時もエタノール添加時もともに、溶液から少量の脱ガスを行うことは高い発光強度をもたらすことがわかった。エタノール添加により脱ガスは純水の場合よりも促進されることが明らかになった。これは、ハイドロカーボンの蓄積が気泡内に生じ気泡径が増加し気泡内へ水蒸気がより多く取り込まれ、精留拡散が促進されることが原因として考えられる。
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