研究概要 |
コンピュータの高性能化にともない,大規模な数値計算が可能になり,機器,構造物の全体に対する「まるごとシミュレーション」を実行することが可能となってきている.まるごとシミュレーションにおいては,機器,構造物に影響を与えるさまざまな物理現象の相互作用を考慮するマルチフィジックスシミュレーションが重要であり,その高度化,汎用化を行うためには,各現象に対して開発された高性能なシミュレータの統合が必要となる.このようなシミュレータの統合化を実現するため,本研究課題では,仮想物理空間と名付ける空間・時間に広がる物理量を各シミュレータが共有,操作するプラットホームを提唱する.本研究課題は,この仮想物理空間を実現するための数値計算技術の理論的な基礎を確立することを目的とするものである. 平成21年度の研究では,マルチフィジックスシミュレーションにおける数値解の解像度に対して柔軟な制御を行うための手法として,複数の計算格子(メッシュ)を自由に重ね合わせるいわゆる重合格子法に注目し,検討を行った.重合格子では,計算領域内で計算格子が重ね合わせられるが,そこで同時に複数の未知変数が定義されることは数学的に許容されない.従来の重合格子では,未知変数も和として重ね合わせる手法が用いられていたが,このような方法では,複数の格子で定義された問題は一体として解かなければならない.平成21年度の研究成果として,仮想物理空間を独立な格子として利用することで,重ね合わされた格子とそれぞれが分担する問題を分離する境界を設定し,分離された問題の境界における接合条件は基本的に仮想物理空間で評価する計算手法の可能性が見いだされた.
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