研究概要 |
コンピュータの高性能化にともない,大規模な数値計算が可能になり,機器,構造物の全体に対する「まるごとシミュレーション」を実行することが可能となってきている.まるごとシミュレーションにおいては,機器,構造物に影響を与えるさまざまな物理現象の相互作用を考慮するマルチフィジックスシミュレーションが重要であり,その高度化,汎用化を行うためには,各現象に対して開発された高性能なシミュレータの統合が必要となる.このようなシミュレータの統合化を実現するため,本研究課題では,仮想物理空間と名付ける空間・時間に広がる物理量を各シミュレータが共有,操作するプラットホームを提唱する.本研究課題は,この仮想物理空間を実現するための数値計算技術の理論的な基礎を確立することを目的とするものである. 平成22年度の研究では,領域分割型の重合メッシュ法に対して,解の接続と積分の評価に背景直交格子を用いた有限要素解析手法を2次元ポアソン方程式の境界値問題に対して提案した.提案した手法はNitscheの方法により拡張されたLagrange未定乗数法に基づく方法であり,領域分割された各メッシュの有限要素解析は,領域間境界のフラックスに対応するLagrange未定乗数と領域間境界における剛性を考慮した方程式として,独立に計算が可能であり,Lagrange未定乗数に関しては共役勾配法に基づく反復法で解を求めるアルゴリズムを構築することができた.この手法は,重合メッシュ法を分割された問題の連成として取り扱うアルゴリズムであり,マルチフィジックスシミュレーションのための仮想物理空間の実現に向けた技術基盤のひとつとなると考える.
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