研究概要 |
本年度の主要な成果は,最も基本的な凸計画問題である線形計画問題と凸2次計画問題に対する逐次部分最適化アルゴリズムの開発と大域収束性解析である.線形計画問題については,部分問題の解法に最小添字規則が適用された単体法を用いるアルゴリズムを考案し,反復の過程で退化が一度も生じなければ大域収束性が保証されることを証明した.一方,退化が生じる場合については,数値実験ではすべての例で最適解に収束しており,大域収束性が保証されると予想されるが,理論的な証明には至っていない.凸2次計画問題については,許容解の探索と最適解の探索の両方に逐次部分最適化アルゴリズムを適用した2段階逐次最適化アルゴリズムを提案し,数値計算ソフトScilabによって実装して有効性を検証した.Scilabに組み込まれている関数quaproによる直接解法と,部分問題の解法にquaproを用いる逐次部分最適化アルゴリズムの計算時間を比較した結果,最高で6倍強の高速化が達成されることが判った.また,大域収束性の理論的な解析を行い,解の更新によって目的関数が減少するための十分条件を導出した.しかしながら,線形計画問題同様,大域収束性を保証するには至っていない.上記以外の成果として,複雑ネットワークのクラスター係数の最大化に関する理論解析とセルラニューラルネットワークにおける信号伝搬条件の導出がある.前者は本研究の対象の一つである離散凸最適化に関連し,後者はリカレントニューラルネットワークの最適設計に関連する成果である.
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