金属表面を伝搬する光は表面プラズモンと呼ばれており、従来の光学では考えられないような面白い特性を持つ。 その一つが超集束であり、光の回折限界を超えて、限りなく狭い空間に光エネルギーを閉じ込めることができる。この現象は、表面プラズモンが金属テーパー構造の先端へ向かって伝搬するときに起きるもので、表面プラズモンの伝搬速度が、金属テーパー構造の先端へ近づくにつれて、段々と遅くなり、先端では伝搬速度が零になるために生ずる。 この表面プラズモンの超集束に関して、本研究では、準変数分離法と名付けた、不完全な変数分離法で波動方程式を解く、全く新しい数理解析の方法でアプローチしている。この新しい方法だと、金属テーパー構造のテーパー角を考慮でき、さらに、先端の曲率半径を考慮できるなど、実験的な重要なパラメータを取り入れて数理解析できる。 これまで、この準変数分離法により、円錐と襖の構造を検討し、昨年度は、金属テーパー構造の先端曲率を考慮した放物体の構造を検討した。今年度は、さらに、放物筒の構造を検討し、放物体と放物筒の2構造に対して、共通点と相違点を明らかにした。その主な結果は、(1)放物筒の構造でも、放物体の構造と同様に、超集束が起こらないということ、特に、(2)金属放物筒の構造では、金属放物体の構造と同様に、表面プラズモンが伝搬するモードも存在しないということ、(3)空洞放物筒の構造では、空洞放物体の構造と同様に、表面プラズモンが伝搬するモードが存在するということ、ただし.そのモードの数は、空洞放物体の構造が1つに対して、空洞放物筒の構造では、2つあるということである。これらの結果は、本研究によって初めて得られたものであり、準変数分離法の有効性が改めて示されたものである。また、本年度は、数理解析だけでなく、実験面でも研究成果が出始めて来ており、来年度以降は、実験と理論の融合が期待される。
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