研究概要 |
白色X線による内部き裂近傍のひずみマッピングの高精度化やCTによる内部き裂検出とき裂近傍ひずみマッピングの統合測定システムの検討を行う過程で得られた主な成果を以下に示す。 1) 塑性変形によるNbTiNi系複相合金の相ひずみと結晶構造の変化 白色X線法の利点の一つである「同時に複数の異なる結晶系材料のひずみ測定」の可能性を検証した。その結果、(Nb,Ti)相が先に降伏しTiNi相がその分荷重を負担する挙動や(Nb,Ti)相の顕著な塑性異方性を明らかにすることができた。また、B2構造のTiNi相がひずみ5%以前から一部B19'構造へ変態していることが示唆された。CTにより各相の分離を試みたが、コントラスト不足のため分布を明らかにすることは困難であった。 2) ノッチを有するアルミ単結晶の延性破壊進展 延性破壊の進展の結晶方位依存性を検証するため、結晶方位が明らかで片側ノッチを有するアルミ単結晶の引張り試験を行いノッチ先端近傍のひずみと半価幅の変化を追跡した。その結果、結晶損傷と密接な関係を持つ回折X線プロファイルの半価幅の増大領域がノッチ先端近傍から約45°方向に進展していることが明らかになった。この進展方向は有限要素解析により得られた延性損傷進展方向や実験後に視認できたすべり帯とほぼ一致した。 3) 骨組織内部のチタンネジ先端近傍のひずみ測定 牛大腿の皮質骨から採取した幅15mmの試験片にβチタン製のM3ネジを埋入し圧縮力を負荷しながらネジ山近傍の負荷方向ひずみをマッピングした。その結果、骨組織側ではチタンネジ山近傍に圧縮ひずみが測定された。しかし本実験で用いた回折角が5°であったため、得られた結果は極めて細長い測定領域の平均値となった。測定分解能を高めるための検討を引き続き行う。
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