1.き裂などの延性損傷進展挙動の検討 実験にはアルミ単結晶をI字型に加工し平行部片側にノッチを導入した引張試験片を用いた。試験片に引張り荷重による塑性変形を生じさせながらノッチ近傍で透過回折X線の測定を行い、回折プロファィル積分幅の変化などからアルミ単結晶の延性損傷進展を検討した。その結果、負荷ひずみが1.1%の段階でノッチ底から斜め約45。の方向にひずみの増大がみられた。不均一ひずみに関連する回折プロファイル積分幅のガウス成分も同様の傾向を示した。ノッチ近傍のマッピング測定の結果より、延性損傷に関する各値の変化はノッチ近傍より斜め45。方向に進展する傾向にあり、材料損傷評価を可能とした有限要素法によるシミュレーション結果と定性的に一致した。 2.CTによる内部き裂検出とき裂近傍ひずみマッピングの統合測定システムの構築と検証 高エネルギーX線を利用する場合、回折角が低角となるため、現状の実験環境では両者が干渉しあい同時に稼働させることが困難であった。しかし、CCDカメラを光軸上の最後部に固定することで、装置の載せ替えなしにCCDカメラでのCT撮影とSSD検出器による回折X線の測定が交互に可能となった。このことから、CCDカメラとSSD検出器の同一制御の可能性を確認できた。 3.研究成果のまとめ 本研究では、シンクロトロン放射光から得られる高エネルギーの白色X線を利用して、構造部材の破壊の原因となる材料内部のき裂をCTで非破壊検出して位置を特定し、その近傍のひずみマッピングを同じ装置環境で行うことを可能とする測定システムを検討した。その結果、白色X線を用いたCTによる内部き裂検出を可能とし、内部き裂近傍のひずみマッピングの微細化を図ることができた。CTによる内部き裂検出とき裂近傍ひずみマッピングの統合測定システムの構築には至らなかったが、その可能性を示すことができた。
|