研究概要 |
ボルト締結した部材が繰り返しの負荷を受ける際にボルト穴近傍で発生・伝播する疲労き裂を非破壊的に検出する手法の開発を目的としている.本年度は,アルミニウム合金(A2024-T3)平板より製作したボルト締結試験片について周波数10Hzの疲労試験を行うとともに,荷重サイクルに同期させた表面弾性波(SAW)の測定を行った.また,0.001Hzの非常に低周波数の疲労試験を行い,実時間超音波測定及びき裂開閉口挙動の観察を行った.その結果,以下の成果を得た. 1.疲労サイクルに同期させたSAW測定により,疲労サイクル中の応力の変化に対応して疲労き裂からの反射波強さが変化する現象を明らかにした.すなわち,応力が増加するに従って反射波強さは増大していき,応力の減少に伴って反射波強さは低下していった.反射波強さと応力との関係を反射波強さと応力拡大係数との関係に読み替え,反射波強さが疲労き裂の開口長さに比例すると仮定して解析し,各段階における疲労き裂長さを評価した.その結果,以前求めた疲労き裂長さと反射波強さとの関係とよく一致する結果を得た. 2.0.001Hzの非常に低周波の疲労試験を実施しながらSAW測定を行い,疲労き裂からのSAW反射波強さが応力サイクル1周期中に変化すること,反射波の変化状況が周波数10Hzの疲労試験中に実施した同期測定とほぼ一致すること,を明らかにした.この結果より,周波数10Hzの疲労試験中に行った同期測定の結果は疲労試験の周波数に依存しないことが明らかとなった. 3.周波数0.001Hzの疲労試験中に疲労き裂の観察を行い,疲労サイクル中の応力変化に対応して疲労き裂が開閉口することが確認された.
|