研究概要 |
本研究では,MRI(核磁気共鳴画像)を用いて海綿骨の3次元構造や海綿骨を構成する骨梁の力学的性質を評価する新たな骨臨床診断方法を開発し,海綿骨の生体適合性等を明らかにすることを主な目的としている.平成22年度では,15T MRIを利用して,健常被験者の距骨および踵骨を対象とした生体内での3次元骨梁解析を行い,両骨による骨梁構造の比較や身長および体重が骨梁構造に及ぼす影響について調べた.さらに,pQCT(peripheral quandtative computed tomography)を用いて踵骨の単位体積あたりの骨密度vBMDを測定し,踵骨の見かけの骨梁構造パラメータとvBMDとの関係について検討を行った.その結果,距骨のパラメータのうち,見かけの骨体積分率app.BV/TV,骨梁厚app.Tb.Th,骨梁数app.Tb.Nおよび異方性度app.DAが踵骨のそれらより有意に大きく,見かけの骨梁間隔app.Tb.Spのみが踵骨のそれよりも有意に小さかった.また,見かけの偏差角app.OAAは距骨および踵骨ともに0°に近い値であるが,踵骨のapp.OAAの方がやや大きい値となる傾向がみられた.さらに,両骨の見かけの骨梁構造および関節面形状パラメータと身長および体重について各々線形回帰を行った際の相関係数rについてそれぞれ調べた.距骨においては,身長に対してapp.BV/TVとapp.Tb.Nは正の相関(r=0.70,7=0.65)があり,app.Tb.Spは負の相関(r=-0.66)を示したが,app.Tb.Thとapp.OAAには相関は認められなかった(r=-0.03,r=0.05).また,距骨ドーム曲率CTDは身長と負の相関傾向を示した(r=-0.61)が,体重とは相関はみられなかった(r=-0.19).vBMDとapp.BV/TVおよびapp.Tb.Nはいずれも正の相関(r=0.63,r=0,61)が,app.Tb.Spは負の相関(r=-0.65)がみられたこと等を明らかにした. 一方,距骨の海綿骨の骨梁構造に及ぼす生体内の力学的環境を明らかにするために,健常者を対象にMRIと自作の下肢関節負荷装置を併用して,脛距関節の生体内での足関節の底背屈状態における接触領域を定量的に求め,身長および関節面形状が関節接触面積に及ぼす影響についても明らかにした.
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