研究概要 |
本研究では,MRI(核磁気共鳴画像)を用いて海綿骨の3次元構造や海綿骨を構成する骨梁の力学的性質を評価する新たな骨臨床診断方法を開発し,海綿骨の生体適合性等を明らかにすることを主な目的としている.平成23年度では,健常被験者の大腿骨に対してin vivo(生体内)でのMR撮像を行い,大腿骨頭上部および大腿骨頚部に関心領域VOIを設定し,海綿骨の3次元骨梁構造解析を行った.そして,見かけの骨梁構造パラメータ(体積分率,骨梁厚,骨梁数,骨梁間隔)を求め,大腿骨頭上部と大腿骨頚部の骨梁構造を評価し,見かけの各骨梁構造パラメータと身長との関係等を調べた.その結果,大腿骨近位部における骨梁構造は,VOI内全体の密度の違いは少なく,頚部に比べ骨頭上部の方が密な構造になっていることがわかった.また,見かけの各骨梁構造パラメータと体格との関係は,身長が高くなるに従い,骨頭上部の骨梁構造は相似的に拡大し,頚部の骨梁構造は相似的拡大に加えて密な構造変化となることがわかった.そして,骨頭上部と頚部の骨梁構造は,身長の増加に伴い異なる構造変化を示すことを明らかにした。 一方,平成21年度から行ってきた足関節,特に距骨の海綿骨構造解析より,身長に対して見かけの骨体積分率と骨梁数は正の相関があり,骨梁間隔は負の相関を示すことを明らかにした.また,距骨ドーム曲率は身長と負の相関傾向を示すことがわかった.これらのことから,脛距関節のin vivoでの接触挙動についてMRIを用いて解析を行い,関節の底背屈状態における接触領域を定量的に求め,身長および関節面形状が関節接触面積に及ぼす影響について明らかにした.その結果,接触面積を距骨関節面積で除して正規化した接触面積比は,荷重下の中間位で最大となり約40%であり,底背屈に従い減少した.また,被験者の身長が高くなるにつれて距骨関節面のドームは平坦になり,関節の接触面積比が増加することを明らかにした.
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