研究概要 |
【供試材および実験種別】平成21年度には,プラズマ窒化処理(PN),微粒子衝突処理(FPB)およびDLC被覆処理(DLC)を施したTi-6Al-4V合金について各種実験を行った.具体的には,未処理材以外に,上記の表面処理を単独あるいは複数組み合わせた7種類の供試材(処理の組合せ:PN, FPB, DLC, PN/FPB, PN/DLC, FPB/DLC, PN/FPB/DLC)を準備した.実験としては,表面性状・母材部組織の観察,硬さ分布測定,残留応力測定,引張試験,摩擦摩耗試験(ドライ環境)および疲労試験を行い,各種特性値等について系統的に検討した. 【実験結果】(1)上記3種類の表面処理を単独あるいは複合化して施した場合,未処理材よりも静的強度が悪化することはなかった.これは各処理にともない母材部組織が顕著に成長することがなかったためである.(2)摩擦摩耗特性については,PN/DLC材の場合に低い摩擦係数(0.1)が長距離に渡って維持され,全供試材の中で最も良い結果を示した.この結果は下地処理として施したPN処理により形成された硬化層が,最表面のDLC層の耐久性を改善する上で効果的であることを示していた.DLC層の密着性を向上させるためにFPB処理を施したPN/FPB/DLC材では,FPB処理時に形成された凹凸の影響でDLC層に微細なピットが発生し,摩耗摩擦特性がPN/DLC材のそれを超えることはなかった.(3)疲労強度については,PN材において表面に形成された脆弱な化合物層の存在のために未処理材の水準よりも若干低下したが,その他の全処理材では改善した.特にPN/FPB/DLC材では,PN処理後のFPB処理により脆弱な化合物層が除去され,さらにDLC層が形成された結果,顕著な疲労強度の改善が認められた. 【結果報告】平成21年度には,1件の講演発表,2件の論文等の掲載がなされた.また平成22年度には,得られた結果を日本材料学会第59期通常総会講演会および同学会第30回疲労シンポジウムで講演発表する予定である.
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