研究概要 |
【研究概要】平成23年度には,プラズマ窒化およびCrN被覆処理を施した後に,各種DLC被覆した合金工具鋼SKD11および機械構造用合金鋼SCM435について,DLC層の性状・密着性,母材組織,硬さ分布および摩擦・摩耗特性について系統的に調べた.この研究は,前年度までに得られた結果に基づいて,DLC被覆を最終処理とする,高い面圧下でも破壊が生じない複合表面層の形成ロセスを確立するために行われた.具体的には,1.水素添加量(4段階)の相違に基づくDLC層の性状変化,2.TiAlドーピングや加速電圧の低下によるDLC層の性状変化,3.CrN層および窒化層の形成(下地処理),4.元材の硬さ,がDLC層の耐久性に及ぼす効果について検討した. 【結果概要】上記1および2については,水素添加量を増加させてDLC層の硬さを若干低下させた場合が,最も高い耐久性を示した.DLC層の硬さの低下は磨滅速度の上昇を招いたが,同層の一様な磨滅が生じたため,結果として高い耐久性を示した.3に関しては,CrN層の形成が低い面圧下では摩擦係数の低減等に効果的であったものの,高い面圧下では返って同層に顕著な破壊が生じた.その一方で,窒化層の形成は明らかにDLC層の耐久性を高めた.4に関しては,元材の硬さが高いSKD11鋼の方が,DLC層の耐久性は高かった.以上のように,高硬さを有する元材に,ぜい性的な破壊が生じない拡散処理を下地処理として施し,さらに比較的低硬さのDLC層を被覆することが,高い面圧下では効果的であった. 【結果報告】平成23年度には,日本機械学会2011年度年次大会および第2回日中疲労シンポジウムで発表を行うとともに,2件の招待講演を行った.また,1件の論文投稿を行った.今後,さらに学術誌への論文投稿を複数編予定している.
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