研究概要 |
本研究では不均一変形領域が形成された銅双結晶を測定対象とし,粒界近傍の局所的な残留応力を測定することにより,結晶変形と残留応力の関係を明らかにしようと試みた。 初期方位として構成結晶の主すべり系のすべり方向が90°をなす非対称傾角関係にある銅双結晶を作成し,30%の引張塑性変形後に形成される残留応力を実験室X線およびSPring-8におけるシンクロトロン放射光(SR)を利用して測定した。 実験室X線を利用するにあたり,単結晶応力測定を実現させるための機能を持つ試料台を製作し,コンピュータ制御で自動測定するシステムを構築した。 実験室X線測定では,引張軸に直角方向の応力分布を測定し,各結晶とも粒界近傍は軸方向および直角方向応力ともに圧縮,また粒界から離れ試料端部に近付くにしたがって引張に移行した。さらに,SRによる測定では,変形帯およびキンク帯の応力測定ができ,両者の間のせん断応力が互いに逆であることを初めて明らかにした。残留応力の形成は双結晶粒界に集積した転位の逆応力がその原因であり,粒界への転位の集積,変形帯とキンク帯の変形の違いがこれらの微視的残留応力を形成していることで説明することができる。 平成21年度は30%引張塑性変形した試料のみによる測定であったが,22年度には10%および20%の変形試料についても測定を行い,粒界による変形拘束と微視的残留応力の発生についてのモデルを構築する予定である。
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