研究概要 |
銅およびアルミニウムの双結晶を用いて塑性変形による粒界近傍の残留ひずみ,残留応力およびピークプロファイルの半価幅をX線回折により測定した。塑性変形によって粒界近傍に運動を拘束された転位が集積することによる微視的挙動を調べた。 1.銅双結晶の塑性変形後の粒界近傍の残留応力分布の測定 構成結晶粒の主すべり系のすべり方向が互いに90°をなす非対称傾角関係にある銅双結晶を用いて,30%引張変形を与えた後の残留応力を観察した。長手方向の残留応力は変形マトリクス中で引張であるのに対してキンク帯では圧縮であり,応力の絶対値はキンク帯が変形マトリクスに比べて大きかった。ピークプロファイルの半価幅はキンク帯の方が大きく,転位の集積が変形マトリクスより複雑であることに関係していることが分かった。 2.アルミニウム双結晶の塑性変形後の残留ひずみ分布の測定 構成結晶粒の主すべり系のすべり方向が互いに90°ねじり関係にあるアルミニウム双結晶を用い,16%引張変形を与えた後の残留ひずみのマッピング測定を行った。放射光を用いて試料内部のひずみを測定した結果,試料内部で表面から裏面にかけて引張から圧縮ひずみへと変化した。ピークプロファイルの半価幅は双結晶粒界で大きく,粒界から離れるに従って小さくなった。結晶変形の際に,主すべり系の活動によってらせん転位が粒界に集積し,粒界から離れるに従って転位の集積が一様になったと考えられる。
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