研究概要 |
複雑な三次元形状の製品の成形に適しているRTM法では,あらかじめ強化繊維を設置した金型内に樹脂を注入して硬化させるため金型内部の状態が確認できず,高品質な成形品を短い成形サイクルで得るために樹脂の流動や硬化度をモニタリングするスマート化が望まれている.本研究は金型外側表面に設置した超音波センサを用いて金型内側表面での反射率変化を検出することにより樹脂流動先端位置および樹脂の硬化度を評価する手法の確立を目的としている. 平成22年度は曲面にも接着できるという圧電フィルムの特長を活かすため,半円筒形金型を用いて樹脂流動モニタリングを行った.短冊状の圧電フィルムの一部を無効化することにより較正部と測定部を設け,樹脂流動先端の較正部通過に伴う振幅低下量を基準として測定部通過中の振幅低下量を規格化する方法を提案した. まず,金型内側表面における樹脂先端位置を目視で確認できるよう強化繊維を設置せず樹脂だけを注型し,樹脂先端位置と振幅低下量との関係を求めた.次に強化繊維を設置した金型に樹脂を注入し,同様の測定を行った.強化繊維がある場合のほうが振幅低下量は大きいが,較正部での低下量で規格化することにより両者の結果がほぼ一致することが確認された.振幅の低下量と樹脂先端位置の関係は完全に線形ではなく,圧電フィルムの接着状態に起因するわずかな非線形性が見られた.このような場合であってもあらかじめ樹脂だけの注型により求めた較正曲線を用いることにより,実際の成形時に樹脂流動先端位置を数mmの精度で評価できることが明らかになった.
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