研究概要 |
本研究は,RTM法によるFRP成形のスマート化を目的とし,金型外側表面に設置した超音波センサを用いて樹脂の流動先端位置および硬化度を実時間モニタリングする技術の確立を目指したものである.平成23年度は樹脂の硬化モニタリングに焦点を当て,基礎的な研究として金型内側表面での反射率変化が樹脂特性の変化を理論どおり反映しているかを調べた.硬化初期の樹脂が粘性流体であることから,圧電フィルムを用いた測定では縦波に対する音響インピーダンス,せん断波用電磁超音波センサを用いた測定では樹脂の粘度に依存した反射率変化が起こると考えられる.圧電フィルムを用いた樹脂中の縦波音速測定および粘度計を用いた樹脂粘度の測定を行うため,強化繊維を用いずに樹脂だけの注型実験を行い,反射率の測定結果と比較した.反射率は縦波については金型中の多重エコーの振幅比,せん断波については金型内に発生させた定在波の減衰として求めた. 圧電フィルムを用いた測定では,樹脂中を伝播して反対側の金型表面で反射したエコーが金型中の第1エコーと第2エコーの間に観測されるように厚い金型を用いた.硬化に伴い樹脂中の音速が増加し,金型内側表面での反射率が低下する傾向は見られたが,音響インピーダンスから理論的に求められる反射率変化とは一致しなかった. 電磁超音波センサおよび粘度計を用いた測定では,硬化に伴い増加するせん断波定在波の減衰が一旦低下するBステージと思われる時期に粘度上昇の割合が低下することが確認できた.ただし,粘度低下までは起こっておらず,減衰が低下する原因の特定には至っていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,RTM法によるFRP成形時の樹脂流動先端位置と樹脂の硬化度を金型外部に設置した超音波センサにより評価する技術の確立を目指したものである.樹脂流動に関しては多点型電磁超音波センサによる離散測定および圧電フィルムによる連続測定が可能であることが平成22年度までの研究で確認されており,平成23年度は樹脂硬化に関して理論と定性的に一致する傾向が確認できた.最終年度では,理論との定量的な差の原因を明らかにし,実際にFRP成形を行い硬化モニタリングの可能性を検証することで実用化の可能性を示すことができる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成24年度は,樹脂硬化時に金型内側表面における反射率変化が起こるメカニズムを明らかにするとともに,実際にRTM法によるFRPの成形を行い,電磁超音波センサおよび圧電フィルムによる硬化モニタリングの可能性について検討する.実用化を視野に入れ,2種類のエポキシ樹脂に対していくつかの異なる温度下での成形を行い,汎用性のある硬化モニタリング手法の確立を目指す. 平成23年度に行った樹脂単体の硬化モニタリングでは,成形部両側の金型を圧電フィルムと電磁超音波センサの測定に適した板厚として同時に測定を行ったが,成形部厚さもそれぞれの最適値として別々に測定を行い精度の向上を試みる.
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