研究概要 |
平成21年度においては,結晶格子オーダーの離散量に対する保存則を代表体積要素内で加算平均し,連続体の一物質点に収束させることで,再結晶現象に対する質量,運動量,角運動量の保存則を定式化した.また,静的再結晶問題に対する秩序および方位の発展を支配する釣合い方程式をそれぞれ再結晶相の体積分率で表現した質量保存則および結晶の格子回転に対する角運動量保存則から導出した.秩序流束・方位流束の構成式についてエントロピー増大則に基づく検討を行い,秩序と再結晶方位の連成を考慮した新たなPhase-Fieldモデルを構築した.その際に,オーダー評価を介して角運動量方程式を巨視的部分と微視的部分に分離し,前者からは格子回転を考慮する場合でも応力テンソルが対称に保たれること,ならびに後者から結晶方位の支配方程式が導出されることを明らかにした.さらに,保存部分を無視した結晶方位の支配方程式に時間積分を施し2次元化することでKWC形Phase-Field方程式へ帰着することを示した.構築したPhase-Fieldモデルを用いた2次元解析を行い,対応粒界および幽霊核を考慮した母相からの核成長を再現した.その際,拡散項および反応項の係数が再結晶パターニングに及ぼす影響について検討し,各係数の関数形および物質定数を決定した.また,大角粒界を有する亜結晶粒群を基点とした再結晶核生成に対する2次元解析を行い,亜結晶粒の回転・合体を再現するためのPhase-Field方程式系における諸材料係数の関数形を決定した。さらに,上記のPhase-Fieldモデルを結晶塑性論と連成させることによって,動的再結晶に関するマルチスケールモデルを構築した.本モデルを用いて,双結晶の粒界に1個の核がある簡単な場合を想定した数値解析を実施し,応力-ひずみ線図において塑性変形および粒成長に起因する硬化および軟化を表現した.
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