研究概要 |
平成22年度においては,平成21年度に提案した保存則に基づいたPhase-fieldモデルを用いて,核生成・核成長を同時に考慮した静的再結晶モデルを構築した.まず,大角粒界で囲まれたサブグレイン群を再結晶核候補とし,周りを囲む大角粒界上に拘束条件を設定した.次に解析開始後に計算される秩序変数の平均値および結晶方位の標準偏差が核生成条件を満足する場合を核生成の完了とした.さらにそのような核が臨界核半径より大きな核半径を有する場合のみ,その核は成長を開始するように設定した.以上の解析モデルに基づいて数値解析を実施した結果,核半径が臨界核半径に満たない幽霊核が,それ以外の結晶核の成長によって飲み込まれる様子,ならびに核ごとの核生成潜伏期間および核生成期間後の自律的な核成長が再現され,核生成・成長に対する基礎的な知見を得た.また,多数核を対象とした動的再結晶モデルも開発した.ここでは多数核の粒成長を表現するため,Multi-phase-fieldモデルを新たに導入した.ただし,Multi-phase-fieldモデルにおけるBulkの自由エネルギーは転位の蓄積エネルギーによる駆動力の変化を表現できないという問題点を有していたため,蓄積エネルギーを再結晶の駆動力とした新たなBulkの自由エネルギーモデルを提案し,Multi-phase-fieldモデルを導出した.さらに,得られたモデルを用いて,結晶の変形場と再結晶組織の秩序場を連成させ,動的再結晶のマルチフィジックスモデルを構築した.本モデルに基づいて数値計算を実施し,材料の硬化および軟化に伴う応力-ひずみ線図の振動現象とともに,複数の核が変形を受けながら成長する動的再結晶現象を再現した.以上から,動的再結晶過程におけるマクロ挙動およびミクロ組織の発展の基礎的なメカニズムに対する知見が得られた
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