研究概要 |
近年,インフラ構造物の経時劣化や強度不足が問題視される中,構造物の健全性をリアルタイムに監視するSHMシステムが注目されている.本研究では,研究代表者らが開発を進めてきた画像情報に基づく非接触SHMシステムを基礎として,コンクリート構造物等の表面き裂をリアルタイムに定量評価できるSHMシステムを構築することを試みている.平成21年度には,(1)非接触き裂監視システムの試作および(2)き裂検出感度に及ぼす因子の解明に取り組んだ.その結果,(1)に関しては,CCDカメラで撮影した画像をデジタル画像相関法を用いて処理することによって,評価領域内の変位場を高精度に測定することが可能であることが明らかになり,得られた変位場を弾性力学と破壊力学の視点から解析することによって,高精度にき裂を可視化することに成功した.この際,き裂開口量を表す独自の損傷評価パラメータを提案し,その有用性を表面性状の異なる複数の供試体を用いた実証試験によって証明した.一方,(2)に関しては,損傷評価パラメータを算出する際に設定する諸条件を種々変化させ,その際に得られる評価結果の精度や確度について考察した.その結果,損傷度と諸条件との関係を定量化することに成功し,評価対象に応じた設定条件を明らかにすることができた.また,画像相関パラメータの関しても検討を行い,本手法の基礎となる変位場計測の精度を向上させることができた.ただし,現状では,損傷パラメータの算出に時間を要しており,今後,アルゴリズムの改良によって効率化を図る予定である.
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