研究概要 |
昨年度に引き続き,5×5×1mmのPZTに部分電極を設け,その境界に予き裂を導入した試験片に繰返し電界を負荷した時のき裂伝ぱ挙動を調査した.昨年度の成果として,部分電極境界部に存在するき裂は繰返し電界負荷に伴い成長する,ただしその伝ぱ速度は徐々に低下し,最終的に停留する,またき裂伝ぱ挙動は負荷する電界の大きさに依存するなどのことが明らかになった.そこで今年度は直流バイアス成分および環境の影響に注目して実験を行った. 繰返し電圧幅ΔV=800Vに対し,直流バイアス+400Vをかけ,分極に対し正の電界の範囲で繰返し負荷をかけると,ΔV=±400Vの場合に比べき裂の伝ぱ速度が大きくなり,その後き裂が停留する際のき裂長さも長くなることがわかった.また,-400Vの逆バイアスを負荷した場合,き裂の伝ぱ速度は大きくばらつく結果となった.同様な繰返し電界を負荷した時の,実際の材料の変形挙動を測定することで,大きな負の電界を負荷した場合のき裂伝ぱ速度のばらつきの原因がPZTの分極反転挙動によるものであることを明らかにした. 環境の影響を明らかにするため,恒温恒湿器内で同様の実験を行った.結果,温度40℃,相対湿度60%の環境下では,通常の実験室環境下と比較してき裂伝ぱ挙動に大きな変化は見られなかったが,40℃で80%まで湿度を高めた環境下ではき裂伝ぱ速度が上昇し,かつ停留き裂長さも増大することがわかった.
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