研究概要 |
今年度は電気弾性場が集中する部分電極縁に存在する微小き裂の電界誘起き裂進展挙動を解明するため,電界負荷時における,き裂の変形状態を有限要素法により解析した.予備解析として,半円状表面き裂を中央に有する線形圧電体(1×1×1mm)の3次元モデルを構築し、き裂面延長線を境界とする片側のみに正および負の電界を与える条件で解析した.正電界の場合,き裂面が接触するように変形が生じ,き裂面同士が重なり合うような挙動を示すことが分かった.このため,き裂面間に摩擦力を導入し,4種類のき裂長さ,4種類の摩擦係数に対して非線形接触解析を行った.そしてき裂縁の相対変位から面外モードの応力拡大係数KIIIを評価した. 結果,KIIIにはき裂長さ依存性が見られないものの,摩擦力を大きくすることでその値は急激に減少することが分かった.たとえば摩擦力が働かいない場合のKIIIと摩擦孫数が3の場合のそれを比較すると,後者は60%程度減少する.前年度までの実験により得られたき裂伝ぱ挙動,すなわち繰返し電界負荷直後に,き裂が伝ぱした後その伝ぱ速度を低下させながら停留き裂に至るという実際の挙動と対応させると,き裂の伝ぱに伴い,破面間での摩擦が増加し,き裂面の相対変位が拘束され,き裂先端部での機械的応力場の強さが低下することでき裂が停留するに至ることが判明した. また破面を詳細に観察し,比較的伝ぱ速度が高い領域では粒内でき裂が進展するものの,停留する直前のき裂先端部破面には粒界割れの様相が支配的となることも明らかにした. 以上の知見をまとめて英文論文誌上に成果発表を行った.
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