本研究は、応力がひずみ速度により変化をする粘弾性特性をもつ脊髄について、自動車事故等の衝撃が加わった際の解析を行うため、自動車事故並みのひずみ速度による引張り試験が可能な脊髄用高速引張り試験装置を開発し、豚の頚髄(軟膜2種、歯状靭帯、白質、灰白質、くも膜など)の粘弾性特性を明らかにすることを目的としている。また、追突事故による乗員の外傷性頸部症候群(むち打ち損傷)の原因と考えられている頸椎椎間関節の挟み込み挙動に関する数値解析を行うための基礎的データとして、椎間関節包の機械的性質を得るための引張り試験も並行して行い、その機械的性質も明らかにしたい。 22年度初頭に試験装置はほぼ完成し、豚頸髄の軟膜2種(後外側溝、後正中中隔)および歯状靭帯の機械的性質については、ひずみ速度10および100/sによる高速引張試験から弾性率、最大応力、最大ひずみの試験結果を得ることができた。その結果、弾性率に関しては、3種類の試料とも応力がひずみ速度により変化をする粘弾性特性の性質を示すことが確認できた。 さらに、豚脊髄実質および椎間関節包の試料を使用して試料取付け部の作成と改良を実施中であったが、22年度中に発生した口蹄疫の影響により、新南陽食肉センターからの豚頸椎の供給が不可能となった。そこで、試料を急遽、牛頸髄に切り替え、研究体制等を一部変更した。試料を豚から牛に変えたことで、試料供給元の模索、県への申請、さらに試料採取方法の確立と試料取付け部の変更に時間を費やした。BSEの関係で通常は牛脊髄の持ち出しはできないが、現在は山口県の許可を得て牛頸椎を得ている。22年度末に試料採取方法の確立と試料取付け部の変更の目処がついたことから、23年度はより多数の試験を行い、結果を出したいと考えている。
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