研究概要 |
金型製作の高能率化と高精度化を目指し,本研究では8の字形3次元工具振動とダイヤモンドコンパウンドを用いて放電加工面を鏡面に仕上げる研磨システムの開発を行っている.当該年度は,以下の実験および開発を行った. (a)マイクロスコープを用いた砥粒挙動の観察 工具振動形態が工具と工作物間での砥粒挙動に与える影響を調べるため,工作物としてガラス板を用い,ガラス板の下側からマイクロスコープを用いて砥粒挙動を観察した.その結果,8の字形3次元振動の交差角(8の字の交差する部分の外側の角度)が小さいほど砥粒の流れの方向性が強くなり,交差角が大きくなると砥粒が広がって流れる傾向が見られた.また,被研磨面に対して垂直方向の振幅が大きくなると砥粒が工具端面の中央に集まる傾向が見られた. (b)研磨条件が被研磨面の表面粗さや表面テクスチャに与える影響を調べる実験 形彫り放電加工されたSKD11改良材を被研磨面として用い,8の字形3次元工具振動の振動形態をパラメータにして研磨実験を行った.実験では工具振動形態が表面粗さの異方性に与える影響について調べた.表面粗さの異方性を調べるために,工作物送り方向とそれに対して直角方向の表面粗さを測定し,両者を比較した.その結果,交差角が90°の8の字形3次元工具振動で得られた研磨面は粗さの異方性が小さくなることがわかった.マイクロスコープを用いた観察においてもその傾向を確認できた. (c)工具振動を制御するPZTドライバのデジタル化 工具振動形態をより柔軟に設定できるようにするため,工具振動を制御するPZTドライバのデジタル化を行った.デジタル化にあたってはDA変換ボードの機能(DA変換ボードに内蔵されたメモリに予め波形1周期分のデータを書き込んでおき,それを高速に連続出力する機能)を利用した.PZTドライバをデジタル化した後,指令通りの振動形態が得られることを確認した.
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