研究概要 |
金型製作の高能率化と高精度化を目指し,本研究では8の字形3次元工具振動とダイヤモンドペーストを用いて放電加工面を鏡面に仕上げる研磨システムの開発を行っている.当該年度は以下の実験を行った. (a)ダイヤモンドペーストの流動状態観察(平成21年度から継続) ガラス板を工作物に見立て,研磨工具と被研磨面との間におけるダイヤモンドペーストの流動状態をガラス板の裏側からマイクロスコープで観察した.砥粒サイズ1μmと3μmのダイヤモンドペーストのそれぞれについて8の字形3次元工具振動による流動を調べたところ,1μmのダイヤモンドペーストではダイヤモンド砥粒が分散した一様な流れが観察されたのに対し,3μmのダイヤモンドペーストでは淀みを伴う流れが観察された.また,研磨力が大き過ぎると,ダイヤモンドペーストの流れが悪くなったりダイヤモンド砥粒が工具端面に固着したりする傾向が現れることがわかった.さらにダイヤモンドペーストの分散媒の粘度の影響を調べた.粘度の高い油ベースのダイヤモンドペーストに比べ,粘度の低い水ベースのダイヤモンドペーストは工具端面の中央に砥粒が集まる傾向が見られた. (b)8の字形3次元工具振動形態の局所的平坦化が研磨効率に与える影響を調べる実験 平成21年度に,3次元工具振動システムの構成要素である圧電アクチュエータのドライバをデジタル化した.これにより,発生させることのできる工具振動形態の自由度が高まった.平成22年度は,8の字形3次元工具振動を局所的に平坦化することで振動1周期中に工具が被研磨面に接触している時間が長くなるようにし,その平坦化の度合いが材料除去効率に与える影響を調べた.実験の結果,3μmのダイヤモンドペーストを用いたときに平坦化の度合いが大きいほど材料除去効率が高まる傾向が見られた.
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