研究概要 |
平成22年度に,それまでアナログ回路で構成されていたPZTドライバをデジタル化し,発生可能な工具振動形態の自由度を高めた.従来のアナログ式PZTドライバで得られる8の字形3次元振動は,振動1周期中に工具が被研磨面を研磨する研磨距離(以下,1周期当り研磨距離と呼ぶ)が非常に短かった.1周期当り研磨距離を長くすることができれば材料除去効率が向上することで研磨効率も向上すると考えられる.工具と被研磨面の間の最大すき間を小さくせずに1周期当り研磨距離を長くするため,扁平した8の字形3次元振動を発生させ,その扁平の度合いが研磨結果に与える影響を調べた. 扁平の度合いを変えた3種類の8の字形3次元振動,砥粒サイズ1μmのオイルベースダイヤモンドペーストと水ベースのダイヤモンドペースト,砥粒サイズ3μmのオイルベースダイヤモンドペーストと水ベースのダイヤモンドペースト,研磨力4N,6N,8N(工具端面は2mm×2mm)のすべての組み合わせで研磨実験を行った.その結果,研磨力が8Nのとき,8の字形3次元振動の扁平の度合いが大きくなるほど材料除去効率が高くなる傾向が見られた.しかしながら,その扁平の度合いを大きくしても被研磨面の表面粗さの低減率が向上したり断面プロファイルの崩れが小さくなったりするといった効果はほとんど得られないことがわかった. 一方で,8の字形3次元振動によって得られる研磨面の断面プロファイルには,どの研磨条件においても形状の大きな崩れが見られた.これは工具が上下に振動することで工具端面と被研磨面との間に砥粒の滞留が生じ,それが8の字形3次元振動によって工作物送り方向に運ばれるためであることがわかった.この問題を解決するため,工作物送り方向に対して直角方向にダイヤモンドペーストを運ぶような円振動を用いて研磨実験を行ったところ,形状崩れの小さい研磨面が得られた.
|