超硬合金をワイヤ放電加工で成形するとともに、同じ加工機上でSurfce in tegrity cut (SI-cut)という新しい改質工程を導入することにより、超硬合金ワイヤ放電加工面を完全にクラックレスにする目的で研究を行い、今年度は以下の点を明らかにした。 ・SI-cutを民間企業へ導入 本研究で達成されたSI-cutは、掛け流し方式の直流電源であるワイヤ放電加工機において達成されたものである。実際の生産現場では、浸漬方式の無電解電源を用いたワイヤ放電加工機が使用されている。したがって、掛け流し方式で蓄積したSI-cutのノウハウをそのまま浸漬方式に適用できるかどうかが鍵となる。ここでは、一民間企業で導入されている牧野フライス製作所(株)のワイヤ放電加工機U32Kを用いて実験を進めた。 (1)浸漬方式でのSI-cut 浸漬方式では、掛け流し方式と異なり、ワイヤと対向する面以外でも、電解が作用する。これは、掛け流し方式よりも、電解が強く作用することを意味する。そこで、この問題を解決するために、工作物とワイヤとの距離、すなわちギャップを少し大きくすることでクラックレスな面を得ることができた。 (2)無電解電源でのSI-cut 工作物を(+)とする直流電源によるワイヤ放電加工では、工作物は酸化され錆びてしまう。この問題を解決するために無電解電源、すなわち工作物は周期的に(+)と(-)に極性が変化する方式が一般的である。これに対して、電源のパラメータを調整し、工作物が(-)になる時間を最大限短くすることで、SI-cutの加工効率を大きく低下させずに表面改質が達成された。
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