本研究では、サブμmの溝幅かつ90°より小さい挟角の微細V溝加工に有用なダイヤモンド工具の開発と応用化を目的としている。V溝加工には、独自に開発したレバー剛性の高い加工用ダイヤモンドカンチレバーと走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いた。 これまで、たわみ剛性の異なる3本のレバーを有するマルチカンチレバーを試作し、引き切り加工実験から個々のレバーの加工特性を評価し、さらに重畳加工実験により高精度な微細溝加工が可能であった。本年度は、凹加工実験を行い、作製したマルチカンチレバーの評価を行った。 実験に用いたマルチカンチレバーは、各レバーによって剛性が異なり、剛性の低いレバーから順に、レバーA、レバーB、レバーCとし、バネ定数はそれぞれ422.04N/m、510.03N/m、601.48N/mである。凹加工実験は、単結晶シリコンに対して垂直荷重122、403、682pN、加工範囲30×15μm、加工速度60μm/sの条件で行った。 垂直荷重403μNで面加工を行った際の凹加工面のAFM観察像から、レバーAはあまり良好な面加工が行われていないのに対し、レバーBおよびCでは加工面がほぼ均一である良好な面加工を行うことができた。その他の垂直荷重でも、同様に良好な加工面を得ることができた。面加工には、レバー垂直方向の加工が適しているということがいえる。 面加工における垂直荷重と加工深さの関係から、すべてのレバーにおいて、垂直荷重の増加に伴い加工深さも増加した。 今後は、他のレバー形状や切れ刃先端形状を変化させたマルチカンチレバーの開発と、より高能率な微細加工用工具への応用化について検討を行っていくとともに、今年度着手できなかったSPMヘッドの開発・試作を行っていく。
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