研究概要 |
本研究は,寸法効果が顕著になるマイクロ・メゾスケールでの成形加工の解析法を構築することを目的とする.マクロな材料の塑性変形は連続体近似で扱えるが,結晶粒径と比較可能なほど材料の外形寸法が1mm程度以下に小さくなると,塑性変形本来の結晶塑性そのものを考える必要が生じてくる.さらに結晶方位の分布状態によって,材料の変形に強い異方性が生じる.これが塑性変形の寸法効果である.一方,工具/材料間の摩擦の寸法効果は,材料の大きさに対応して工具の表面状態を制御することが困難であることに起因し,摩擦状態の不均一を生じる.特に微小部品の加工では,材料全体の塑性変形におよぼす界面の影響が大きくなる.塑性変形中の界面の問題は,一定で均一であると仮定した摩擦係数によって予測しているのが現状であり,界面の本質に基づく新たな解析法が強く求められている.平成22年度は,実験的に摩擦界面挙動を調べるために,仕事関数(接触電位)を測定するケルビンブローブを作製し、工具表面の凝着を検出する装置を開発した.円柱圧縮過程において,凝着の起点を検出する可能性を明らかにした.また,摩擦の不均一を調べるため,工具表面の局所的な力を直接測定する,レーザーによる光てこを用いた微小変位計測装置を開発し,加工中の摩擦力分布を測定できるようにした.さらに,実際の加工例として,マイクロディンブル加工における摩擦と変形挙動について調べた.解析法の構築については,昨年度の単純な分子動力学解析を発展させ,圧縮時の変形を考慮した摩擦係数を算出し,これを数値表として用いて有限要素多結晶モデルに適用する方法を開発した.変形時に変化する摩擦係数を適用するいくつかの方法を試し,有限要素多結晶モデルにおける変形への影響を調べた.
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