研究概要 |
マイクロ・メゾとは,マクロとマイクロの中間を指す.今後開発が期待される医療用マイクロマシンには高い信頼性,強度,耐久性が要求される微小金属部品の加工が不可欠である.どれだけ小さな金属部品を高精度に塑性加工できるかという問題には,塑性変形と工具/材料間の摩擦の「寸法効果」が大きく関わる.本研究は,結晶のサイズと方位分布を扱える有限要素多結晶モデルと,原子レベルで界面の挙動を扱える分子動力学法を結合し,微小部品の塑性加工の広範囲な問題を扱える解析法を構築することを目的とした.解析にはできるだけ実験値を用いず,実験ではできるだけ直接的な測定を行うことを目指した.用いた方法と結果は以下のとおりである.(1)工具/材料界面を表現する分子動力学解析法の確立---異種界面を連続体と仮定して解析することは困難である.原子間の相互作用を第一原理電子状態計算から求めることができれば,任意の工具/材料の組み合わせに対応できる.工具に硬質被膜を適用することを考えれば,遷移金属炭化物・窒化物は,種類が多く,結晶構造が単純で単一(岩塩構造)であるため,解析においては良い対象となる.本研究では,15種類の遷移金属炭化物・窒化物を工具表面として,材料としてA1のみ1種類を用いた.(2)分子動力学法の摩擦界面の挙動を有限要素多結晶モデルの各結晶粒の摩擦係数として計算する方法の確立---高橋らの有限要素多結晶モデル(「多結晶塑性論」,高橋寛,コロナ社,1999年)に界面の結晶方位によって異なる摩擦係数を適用した.(3)解析結果を検証するための摩擦挙動測定法の開発---成形加工中の摩擦界面の材料挙動を実験的に直接観察することは困難である.そこで解析との比較が可能なように,加工直後の工具表面の材料の凝着状態を高感度で測定することにした.また,現段階ではマクロスケール用ではあるが,摩擦力を直接測定する方法を開発した.
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