研究概要 |
マイクロ・ナノ切削加工機においては,サブミクロンオーダの精度の高速な工具運動が必要となるため,工具端の微小振動が問題となる.これらの振動には,設置床からの地動外乱振動と機械内部の送り運動に伴い発生する直動外乱振動がある.これらの振動を抑制する技術は,能動制振と受動制振に分かれ,特に能動制振技術が半導体製造分野で研究がなされてきたが,切削加工機のように加工負荷がかかり,かつ加減速動作が多様な機械では,運動精度を悪化させるという問題がある.除振機能を高めようと能動制振装置のばねを柔らかくすると,ベースが柔軟に運動し,送り系のサーボケインが低下し,サーボ誤差が大きくなる.逆に,制振機能を向上しようと制振装置のばねを硬くすると,床下振動と設置床の特性の影響が顕著となる.工具-ワーク間のダイナミックスを決めるのは床~加工機~サーボ-送り機構~工具~加工プロセスの特性であり,除振機能と制振機能はトレードオフの関係がある.システム全体は変位と力を介在した力学チェーンで結ばれて,かなり複雑になっているため,個々の最適化ではトータルでの制振性能が向上しない. 本研究の目的は,工具端での運動精度を向上するための設計制御方法を明らかにすることである.このために,力学チェーンをモデル化し,機械構造の持つ慣性・剛性・減衰特性を設計しながら除振・制振・サーボ系を融合する.本年度は,設置床-除振機構-加工機の力学特性を低次元のモデルで表現し,特に直動外乱の工具端振動への影響を解析的し,除振の固有振動数と機械系の固有振動数の比を参照することで剛体に近い振動モードの抑制する設計法を考案し,実験でその効果を明らかにした.
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