研究概要 |
本年度の研究成果を項目毎にまとめる. (1)床と機械の接触モデルの構築:マイクロ,ナノ加工機においては固有振動数60Hz以下の減衰性の悪い低周波振動が軌跡精度や表面粗さの悪化を招き問題となっている.これは,工具やテーブルを高速で駆動すると,加減速時に発生する慣性力や駆動力により低周波の機械振動が励起されるためである.この振動の原因は主に工作機械全体のロッキング振動であり,ロッキング振動には工作機械の支持剛性が大きな影響を与える.しかし,支持剛性の決定要因が不明であるため,工作機械支持部の接触面における接触剛性が支持剛性に与える影響を調査した.具体的には接触剛性を考慮して支持点数変更時の鉛直方向並進振動モードの固有振動数の変化を求め,実験結果と比較した.次に鉛球を用いて接触面の真実接触面積を求める方法について提案し,支持部の真実接触面積を求めた.この結果,支持点数を変更しても真実接触面積の総和は一定になることがわかった.さらに実験により接触剛性を同定する方法を提案した. (2)床剛性・加工機の制御モデル検証と外乱解析:床・加工機・制御系を含む加工システム全体をモデル化し,地動外乱と直動外乱に対する加工システムの振動特性を評価した.昨年度開発した剛体マルチボディモデルとサーボループモデルを組み合わせたモデルを用いて,地動外乱と直動外乱による工具-工作物間の鉛直方向相対変位をシミュレートした結果,除振台によって地動外乱の影響は低減できるが,直動外乱の影響が増大することが定量的に明らかになった. (3)制振のためのシンセシス:制御法として振動モデルを用いたフィードフォワード制御法を応用した.特に今まで不明であった機械特性の汎用力学モデルを構築し,制振制御法を実際の小型マシニングセンタに適用した.高速輪郭運動実験で工具-工作物の相対運動においてサブミクロンまで振動抑制が図れることを示した.
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