研究概要 |
切削加工において工具の長寿命化は極めて重要な課題であり,工具摩耗や切りくず凝着による工具折損のさらなる抑制が強く求められている.これに対し研究代表者は切削工具表面に微細な三次元周期構造を形成することで新たな機能を発現する切削工具を研究開発している.そして実際にフェムト秒レーザを用いて表面にナノ-マイクロメータオーダの周期構造を有する切削工具を開発し,アルミニウム合金切削において耐凝着性を,鉄鋼材料切削において耐摩耗性を著しく向上することができた. 本年度は基礎的研究として,周期構造のディメンジョンが切削特性に及ぼす影響を詳細に検討した.その結果,まず,工具表面における凝着抑制には,凝着の発生段階の抑制と一度発生した凝着の成長段階の抑制が求められることを明らかにした.そして,それらの抑制効果には微細構造としては,構造溝内部への切りくず侵入性および構造溝内部における保持加工液量が大きく影響を及ぼすことがわかった.これらの知見をもとに,溝幅50μm,溝間隔20μmの一方向からなるストライプ状の周期溝構造(マイクロストライプ構造)を表面に有する切削工具を開発した.そして微細構造を有さない市販工具に比べて凝着量を1/5以下に抑制でき,切削抵抗も10%以下低減させることができ,その優位性を確認することができた. これらの研究成果にもとづき,上記のマイクロストライプ構造とナノ-マイクロ構造とを組み合わせたハイブリッド微細構造を発案し,これを表面に有する切削工具を新たに開発した.この工具を用いて実際に切削加工実験をしたところ,優れた特性を示したマイクロストライプ構造を有する開発工具に比較し,その工具寿命をさらに1.5倍以上のばすことに成功した.
|