研究概要 |
今年度は,2本の光ファイバを連結させた新たな熱放射温度計およびエンドミル加工実験装置を作成し,アップカットおよびダウンカットなどの断続切削における工具すくい面表層の周期的な温度変化について明らかにした.被削材にはチタン合金を,工具材種には超硬合金を使用した.工具チップには,温度測定用の光ファイバを挿入するための穴がチップ裏面から工具近傍まで開けられており,穴深さを変えることにより,すくい面から任意の深さにおける加工中の温度特性を測定することができる.光ファイバを主軸内を通し,主軸他端において別の光ファイバに接続することにより,高速回転している工具先端からの熱放射を温度計へと伝送することができる. 工具内部の温度の理論解析には,8分の1半無限体モデルを使用した.計算は,エンドミル加工中に工具と切りくずとの接触長さの変化を取り入れて行った. アップカットにおけるすくい面直下の加工中の温度は,切削開始から少し遅れて徐々に上昇し,切削終了直後に最大値に達し,切削後は徐々に減少していく.一方でダウンカットにおけるすくい面直下の温度は,切削開始直後に急激に上昇し,切削の途中で最大値に達したのち,切削の途中で既に減少をし始めていた.このことは加熱過程での切削工具への熱衝撃はダウンカットの方がアップカットより大きく,冷却過程においてはアップカットの方がダウンカットより大きいことを示唆している. 工具すくい面から内部方向への温度については,すくい面からの深さが増加するにつれて温度は減少し,温度のピークに時間遅れが生じていた.主切れ刃から0.6mmの位置において,工具チップの内部方向への温度勾配は0.5mmあたり約300℃であった. 切削中のすくい面表層の温度変化の特性は,アップカット,ダウンカットともに,計算結果と実験結果は良く一致した.
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