微細な孔はノズルやフィルターなどの需要がありプレスせん断加工の適用が試みられているが、バリの発生やクリアランス管理などの課題がある。申請者はその克服のためにコイニング加工により微細な圧痕を成形しその裏面をエッチングにより溶解除去することで、圧痕の横断面形状に沿った微細な孔を加工する方法を提案している。本研究では板厚0.1mmのベリリウム銅板を用い、この方法により多数列孔加工を実現するための加工要件の解明と加工プロセスの確立を目指している。今年度は多数孔のコイニングを行うための専用卓上プレスを製作し性能評価を行った。圧痕は先端角60°および90°の円錐圧子を用いて成形し、加圧には分解能2μmの電動アクチュエータを用いた。しかし、同じストロークで加圧を停止しても圧子の先端角によりコイニング深さに差が生じた。これは圧子先端角により成形荷重が異なりプレスのフレームのたわみが変化したためと考えられ、ロードセルと変位計を内包させ成形荷重とコイニング部近傍の変位をモニタリングして加圧を停止するよう改良を加えた結果、圧子先端角によらず安定した圧痕成形を行えるようになった。また、試片を二軸のリニアスライダにより水平移動させ、プログラム制御により加圧軸と連動して多数圧痕成形ができるようにした。改良を加えた卓上プレスにより塑性域が干渉しない隣接距離で1つの試片に5個の圧痕を成形し、裏面を一様にエッチングする加工実験を行った結果、孔縁にバリや破断等のない直径30μmおよび50μmの丸孔を加工することができた。寸法精度に関して、孔径のばらつきは圧子先端角が大きいほど大きく、それはコイニング深さの誤差よりもエッチング量の誤差の影響が大きいことがわかった。
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