研究課題
微細な孔はノズルやフィルターなどの需要がありプレスせん断加工の適用が試みられているが、バリの発生やクリアランス管理などの課題がある。申請者はその克服のためにコイニング加工により微細な圧痕を成形しその裏面をエッチングにより溶解除去することで、圧痕の横断面形状に沿った微細な孔を加工する方法を提案している。本研究では板厚0.1mmのベリリウム銅板を用い、この方法により多数列孔加工を実現するための加工要件の解明と加工プロセスの確立を目指している。今年度は多数列のスリット孔加工における隣接間距離の影響について検討を行った。コイニング工程では先端角60°、稜線長さ570μmのV字型圧子により深さ70μmの三角溝圧痕を圧子の稜線間距離を変化させて直列に成形した。昨年度の円錐型圧子に比べ、V字型圧子では隣接圧痕が変形し始める距離が4倍近く大きく、また、隣接圧痕の変形も表層部だけでなく底部にまで達した。三次元剛塑性FEM解析により両圧子による変形を比較した結果、V字型圧子では稜線と直交する方向に一様に材料流動が生じ隣接圧痕の斜面が剛体的に加圧されることに起因していること、および、このような現象はW字型圧痕を用いて2つの圧痕を同時に成形すればこのような生じないことが明らかになった。隣接圧痕が影響を受けない最小の稜線間距離で成形した圧痕に対してエッチングにより裏面を溶解除去して圧痕底部を貫通させた結果、バリや破断等の欠陥を生じることなくアスペクト比25程度のスリット孔を得ることができた。孔の精度(スリット幅)に関しては、昨年度の円形圧子による丸孔と同等であり、圧子形状の違いによる差は見られなかった。また、圧痕の成形深さおよび溶解量の誤差に関しても、円形圧子と同様にコイニング工程よりもエッチング工程での溶解量の誤差の影響が大きいことが判明した。
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Journal of Steel Research International
巻: Special Edition ページ: 559-563