本研究は積層造形法でMolded Interconnect Device(成形回路部品:MID)等の機能性部品の迅速試作実現を将来的な目標とし、本研究課題ではナノマテリアルを用いて機能性部品のラピッドプロトタイピングを実現するために必要となる基礎理論の整備にある。この課題を実現するために、本研究では、以下の項目の研究を遂行する。(1)高粘性樹脂流体吐出のための吐出ノズルの解析と検証実験。(2)微細パターン描画のための熱成形プロセス解析と検証実験。(3)接合問題における積層プロセスの影響の解析と検証実験。 平成22年度は、MID-RP技術の基礎現象解明のための解析・基礎実験などを進めた。特に積層造形技術の異種材料接合問題へ取り組む準備を行った。 (1)接合問題での熱成形プロセスの影響の解析:レーザ焼結積層造形プロセスについて予熱・溶融・凝固段階での温度変化を無次元方程式に基づきモデル解析した。その結果、ステファン数を小さく設定できる造形条件では、温度分布をより一様にできる可能性があることが判った。 (2)接合問題の熱成形プロセス基礎実験装置構築:小型スクリューを用いたFDM装置のノズル機構の設計形状について検討した。入力に回転数、出力に吐出質量とした入出力関係が基本機能に適するという結果が得られた。品質工学に基づくパラメータ設計を用いて、粘度の影響を受けにくく材料の吐出を促進する最良ノズル形状を求めた。 (3)積層造形用導電性樹脂の調合に関する基礎特性実験:ABS樹脂にカーボンブラックを混合した導電性樹脂は、FDM装置による吐出が可能で、カーボンブラック濃度90vol%の吐出後の電気抵抗率は1.03Ω・cmであった。しかし一般的な電気回路として用いるには不十分であることが判った。 (4)粉末焼結式積層プロセスの基礎特性実験:粉末焼結式積層造形に基づく積層プロセスの基礎特性を評価し、通気機能を発現・向上させるための成形条件について検討した。
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