研究概要 |
高機能なマイクロ・ナノデバイスの開発が期待されている.そのためには,ナノスケールでの高アスペクト比を有する三次元加工技術の確立が必要不可欠である.そこで,高精度な位置制御機能を有し,原子レベルでの観察,加工が可能な走査型トンネル顕微鏡(STM)に着目した.本研究では,自身がアスペクト比の高い構造的特徴を持つカーボンナノチューブ(CNT)を探針としてSTM加工を行い,マイクロ・ナノデバイスへ応用が可能なカーボン材料への高アスペクト比ナノスケール穴加工の実現を試みた. CNTをSTM探針として用いて,カーボン材料(HOPG)への室温・大気中における高アスペクト比ナノスケール穴加工を実現し,加工条件が加工形状に及ぼす影響を検討した.また,加工断面およびその場観察により加工原理の推定を目的とする. 実験方法はCNT探針を試料上の一点に固定し点加工,または走査させ線加工を行う.加工条件はバイアス電圧3~7V,加工時間30~120s,トンネル電流0.1,1nAと変化させ行った. 大気中,室温における結果,HOPGに対する加工は可能であった.バイアス電圧の増加に伴い深さが増大するが,直径は3~5Vまで大きな変化はなく7Vで急激に大きくなった.加工時間の変化では,加工時間の増加に伴い深さが増加するのに対し,直径は30s,60sでは大きな変化はなく120sで急激に大きくなった.トンネル電流の変化では,直径は0.1nA,1nA共に大きな変化はない.深さは1nAでの加工が大きくなった.アスペクト比は,CNT探針では5V,60s,1nAの最適条件で1.8と最高になり,W探針での0.2に対し9倍もの増加が確認できた.また,高アスペクト比ナノスケール線加工を実現した.加工の幅も点加工の直径の大きさと同程度となり,CNT探針のSTM加工は線加工に応用できると確認できた.TEMを用いて加工断面の観察を行った結果,加工原理は電界蒸発によるものであると判断された.
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