研究概要 |
金属などの導電体の加工法に比べ,無機絶縁体への微細加工法は進展が遅れている.電解放電加工では電解液中で放電を起こすことで絶縁体に微細形状を創成することができる. 本研究では,平成24年3月までにガラスやセラミックスなどの絶縁性材料を軸対称形状に加工するために,小型部品の加工に適した旋盤型電解放電加工機を試作する.これにより通常の穴加工で問題となるクラックなどの表面性状低下原因を解明するとともに,加工性能を改善することを目的とする. 本年度は下記の2点について実施した. (1)基礎実験装置の試作 加工特性を測定する場合には電極送りを切り込み方向の動きのみに限定した方が簡単化できる.そのため,送りを1自由度に限定した.構造体には絶縁物であるPTFE(テフロン)を用いた. 旋盤型であるため,加工現象の解析には旋盤による切削加工と同様に,工作物の回転により発生する主分力と電極を押し付けることによる背分力を同時に測定した.カセンサは,ひずみゲージを貼り付けた弾性ヒンジ構造とした. 工具電極には機械的強度が高いタングステンを用いた. (2)ガラスの加工状態の測定 工作物には石英ガラス丸棒を用いた.加工条件を変更しながら,主分力を測定した.電解質には取り扱いが容易で安価な塩化ナトリウムを用いた.加工中にケイ酸ナトリウムが発生することはこれまでの研究から明らかになっているため,その除去プロセスを実験的に検討した.放電が発生している場合には主分力が増加し,工具電極と工作物との間の見かけの摩擦係数が増加した.ケイ酸ナトリウムを塗布して加工液中に漬けると,工具電極を押しつけなくても除去された.したがって,水溶性のケイ酸ナトリウムが加工液中に溶け出すことが除去の主なメカニズムであると考えられる.
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