研究概要 |
本研究は,焼結ダイヤモンド(PCD)や電着ダイヤモンド砥石などに対して,非導電体であるダイヤモンド粒子自体を直接放電加工し,微細な工具形状に成形することができる放電ツルーイング技術の開発を目的とする.昨年度は,同じ放電パルスで極性だけが異なるパルスを適当な周期で定期的に切り替えて与える複合パルス(両極性パルス)について検討し,PCDの放電加工速度を向上させるのに両極性パルスが有効であることを示した.本年度は,極性を反転するだけでなく,正負それぞれの極性パルスの種類を個別に変更できるようにし,放電パルス幅(放電持続時間)や最大放電電流が異なる二種類のパルスを複合して与える異種両極性パルスについて検討した.放電パルス幅を最適化することを試みた結果,PCDを正極とする放電パルスに関しては,パルス幅を短くした方が加工速度は向上するのに対して,PCDを負極とする放電パルスについては,パルス幅を長くした方が加工速度を向上させることができた.また,PCDを負極とする放電パルスのパルス幅を長くすると電極消耗率を改善できることもわかった.これは,PCDを負極とする極性では,加工油から生成される熱分解カーボンは,工具電極(正極)側に形成され,その形成量は放電パルス幅が長いほど増加し工具電極を保護するためである.得られた放電加工条件を用いてPCD製マイクロ工具を試作した結果,幅15μmの切削加工用工具を成形することができた.また,これを用いて銅やガラスに対して微細溝の切削加工実験を試みた結果,溝のエッジ部にバリや欠けはあるものの,放電加工で成形した工具は折損することなく,幅15μm程度の溝加工が行えることがわかった.
|