研究概要 |
今年度は3年計画の初年度であり、軽荷重・高速回転条件で、転動体がどの程度公転滑りを起こしているかについて定量的に把握することを目的とした。小径玉軸受695(内径5mm×外径13mm×幅4mm)を対象として、荷重と回転速度を変化させながら、高速度カメラを用いて軸受内部を撮影し、滑りのない理想的な転動体の公転に対しての滑りを測定した。軸受の回転速度は、カタログに記載されているグリース潤滑での最高回転速度である50,000min^<-1>まで行った。荷重は1Nから始めて、695の実用的なアキシアル予圧荷重である12Nまでの荷重を負荷した。 公転滑りの定量的な指標として、滑り率=100×{1-(測定公転速度/理論公転速度)}を定義して評価を行ったところ、以下の結果が得られた。 (1)極端に小さなアキシアル荷重でなければ、滑り率は2.5%以下である。 (2)負荷荷重が大きくなると滑り率は減少傾向にある。 (3)20000min^<-1>までは、回転速度が大きくなると滑り率は上昇する。 ここまでは、定性的に考えられた結果と同じ傾向を示したが、回転速度が20000min^<-1>を超えた場合には、これまでとは逆に回転速度が大きくなると滑り率が小さくなる傾向が見られた。試験が終わった軸受を見ると、保持器に載っていたグリースがすべて消失していた。保持器の回転が高速になり、遠心力で吹き飛んだと考えられる(吹き飛ぶような音が観察された)。グリースが遠心力で吹き飛ぶことにより、転動体/軌道面間の潤滑状態が悪くなり、摩擦が増えることによって軌道面からの駆動力が増えて、滑り率が低下したと考えられる。 公転滑りにおいては、高速になればなるほど滑り率が増加すると考えられていたが、今年度の研究によって、内部の潤滑状態が公転滑りに影響を与えることが明らかとなった。
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