今年度は3年計画の2年目であり、軽荷重・高速回転条件で、転動体がどの程度公転滑りを起こしているかについて定量的に把握することを目的とした。小径玉軸受695(内径5mm×外径13mm×幅4mm)を対象として、荷重と回転速度を変化させながら、高速度カメラを用いて軸受内部を撮影し、滑りのない理想的な転動体の公転に対しての滑り測定を継続した。転動体をセラミックであるSi_3N_4に変えての遠心力による影響や公転滑りが大きな条件で長時間軸受を回転させた場合の内部摩耗についての実験を行った。 公転滑りの定量的な指標として、滑り率=100×{1-(測定公転速度/理論公転速度)}を定義して評価を行ったところ、以下の結果が得られた。 (1) セラミック転動体は鉄製転動体と比較して、公転滑りが小さくなっており、軽量化したことによる遠心力低減が公転滑り抑制に効果があることを確認した。滑り率は1.5%程度であった。 (2) 公転滑りの大きな条件で軸受を回転させ続けると、大きな摩耗粉の数が多くなることをフェログラフィー観察で明らかにした。 (3) 転動体荷重から遠心力を引いた実転動体荷重と滑り率には相関があり、実転動体荷重をある程度より大きくすると公転滑りは抑制できることを明らかにした。 (4) 潤滑グリースを取り去った状態で実験を行うと公転滑りは非常に小さくなった。軌道面と転動面が直接固体接触をすることによって、摩擦係数が大きくなり駆動力が大きくなったためと考えられる。軸受内部の潤滑状態も転動体公転滑りに大きく影響することを明らかにした。
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