研究概要 |
本年度は,植物系生分解性潤滑油を動力伝達用歯車装置に適用するための基礎的研究として,植物原料により合成された環境調和型潤滑油の一つであるポリエーテルカルボキシレートについて,10日間(反応時間240時間)の自動酸化試験を行い,自動酸化反応に伴う過酸化物価(POV),全酸価(TAN)および動粘度の変化を検討した.また,無添加の菜種油についても同様の試験を行い,実験結果の比較・検討を行った.さらに,曽田式四球試験機による摩耗試験を行い,新油と酸化油(反応時間240時間)の耐摩耗性能について検討した結果,以下のことが明らかとなった. 1.全酸価(TAN)は,反応時間に伴って徐々に上昇し,10日目(反応時間240時間)に最大値を示した.過酸化物価(POV)については,反応時間に伴って徐々に上昇するものの,9日目(反応時間216時間)に最大値を示し,10日目(反応時間240時間)はやや減少した. 2.菜種油の場合,酸化油(反応時間240時間)の摩耗こん直径は,新油と比べて増加しており,酸化により潤滑性能が低下した.一方,ポリエーテルカルボキシレートの場合,新油の潤滑性能は菜種油と比べて劣るものの,酸化油(反応時間240時間)の摩耗こん直径は,新油の場合とほぼ等しい結果が得られた.したがって,酸化に伴う潤滑性能の低下は認められず,環境調和型潤滑油の基油として有望であることが明らかとなった.また,ポリエーテルカルボキシレートの酸化油(反応時間240時間)の場合における接触面は,他の接触面と比べて最も平滑となった.
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