研究概要 |
ジェット推進機などで,排気ノスルからの高速流れをノズルを機械的に動かすことにより偏向させ,推力方向を制御するMTV(Mechanical Thrust Vectoring)に対し,ノズル形状は変化させず,流体力学的作用によって推力方向を変更させるのが流体力学的推力方向制御(Fluidic Thrust Vectoring:FTV)である.MTVでは可動部の機械的機構によって重力が増え,燃料消費や運動性能の低下が大きな課題となるばかりでなく保守経費も増加する.FTVではこれらの欠点が解消される事が期待される一方,排気の制御性が気体力学的振る舞いに大きく依存するため,制御入力(二次噴流流量など)と出力(偏向角など)の関係を正確に知る事が極めて重要であり,実用化には多くの実験・数値計算による大量のデータに基づく研究と開発が必要である.本研究はこのような状況を背景に,FTVに関する気体力学的研究及びFTV開発のツールとなる計算手法の確立を主要な目的とする. H21年度は研究初年度であり,実験装置の設計製作と二次元数値計算コードの開発を二つの柱として課題研究を推進した.装置の開発では,33立方メートルの真空タンクを利用して吸い込み式風洞とし,FTV実験のため壁面に二次噴流溝を切ったノズルを設置した.さらに光学可視化システム(シャドウグラフ法・シュリーレン法)により基本的な動作確認までを確認する事ができた.数値計算では二次元非粘性計算コードを開発して,実験装置の性能予測データを得るためにノズル形状,噴流溝の位置などを変化させた計算を多数行った.
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