研究概要 |
流体力学的作用によってジェット推進機などの高速排気流れの方向を偏向させる流体力学的推力方向制御(Fluidic Thrust Vectoring:FTV)の研究が本課題の目的である.研究初年度の昨年は,容量33m^3の大型真空タンクを利用してマッハ数1.5の吸い込み式風洞を設計制作し,これにFTV実験用二次噴流溝を設けた二次元ノズルを据え付けて,様々な予備実験を行った.また,流れの詳細を解明するため,数値計算のための二次元CFDコードの開発も行った.本年度は当初の目的に沿い、 (1)超音速流風洞の性能試験 (2)二次元ノズルによるFTV実験 (3)数値計算結果との比較によるFTV性能の評価 (4)研究成果の発表 を行った.(1)についてはナイフエッジによる流速マッハ数の測定等様々な方法で,ノズル出口流速がほぼ設計通りになっている事を検証する事が出来た.(2)及び(3)については,ノズル圧力比と2次噴流圧力比の幾通りかの組み合わせについて,排気流の偏向度合いの計測を行った.その過程で,条件によっては意図したFTV性能に反する偏向効果が境界層の剥離・再付着によって引き起こされることを明らかにし,論文投稿を行った.(4)については,これまでに行った研究成果を国内開催の国際会議で発表し,さらにH23年3月開催の衝撃波シンポジウムでも発表予定であったが,こちらは東日本大震災のため中止となった(講演論文集は発行されている).予備実験の結果,精度の高い可視化実験データを得るためには,現状より大きな観測領域が必要であることが分かり,新たな2次元ノズルの設計を行った.最終年度はこの改良ノズルでの研究を行う事になる.
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