研究概要 |
同軸二重円筒間内に満たされる流体において,内円筒(ローター)の回転によって生ずる軸方向渦列(Taylor vortex flow : TVF)は,流れの局所せん断が少なくマイルドな撹拌が可能であるため,細胞を保護しつつ高効率増殖ができるバイオリアクターや血液濾過など,新しい医療工学装置への応用が期待されている.その実用化には装置の小型化が必須であるが,上下固定端近傍のEkman境界層の影響が大きくなることから,流れが不安定になって様々な渦振動が生じ,流れを複雑化させる(カオス流れ).しかし,この現象は,視点を変えれば新しい混合法にも繋がる可能性を秘めていることから,流体力学的な解析が重要である.そこで固液混相流に力を発揮する超音波計測装置(UVP法:超音波ドップラ流速法やUTDC法:超音波自己相関計測法)を用いた流れの解析を行った.特にUTDC法は安価且つ原理的には濃度計測にも発展性が期待されるが,目下UVP法に比べて精度が不十分で,時間変化の解析が満足ではない.このため本研究ではUTDC法の改良に重点をおいた.この結果,渦空間全域ではまだ不完全であるが,空間を限定すれば流れ速度の時間変化をスペクトル解析することが可能となり,UVP法と比較しても十分な精度を確保するまでに至った.本UTDC法を細胞破壊と流れの関連性についても適用させ,一部植物細胞の藻体破壊と乱流強度についても相関が得られた.
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