研究概要 |
一般に,層流渦輪は一定距離直進すると波状変形し,その構造が崩壊して急激に並進速度を失う.軸流を伴う渦輪を形成すると,適切な条件の場合には急激な渦構造の崩壊を伴う乱流遷移が抑制でき,渦輪による流体の輸送距離の増大が期待できる.そこで,H21年度の研究では,次の3項目についての研究を遂行し,このメカニズムを調べた. 1.三次元的な可視化 レーザーライトシートを捜査する装置を製作し,20枚前後の静止画像から渦輪の立体像を構成した.これを利用して渦輪の過渡的な様子,特に,形成後に循環を含む流体をその経路に多く取り残す段階と乱流遷移する段階を詳細に観察した.前者では,後方に取り残される流体は渦度を持つが,シート状ではなく棒状になって渦輪の周りを螺旋状に取り巻き,その先は渦輪の前方に回りこみ,対称軸中心につながっている様子が観察された.これをPeeringと呼ぶ.後者では,波状変形を抑制する効果が裏付けられた. 2.数値計算 空間解像度を抑えて広い範囲のパラメータで計算したところ,軸流の強さと渦輪の移動距離の関係が定性的に実験と同じになることが示された.また,計算条件を絞り,空間解像度を上げて計算したところ,定量的に実験結果と近い値が得られるようになった. 3.ノズルとフード付きノズルの試作 これまでの研究では,噴出形状にはオリフィスを採用してきた.これをノズルに変更したところ,同じ条件ではPeeringが小さくなることが判った.その他,噴出孔に関係していくつか試行を実施したが,実験の目的に合う結果はまだ得られていない.
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