1)渦輪からの流体放出( Peeling)を抑制する手段の探索:H23年度までの実験および数値計算による研究によって,軸流を伴う渦輪には Head and Tail の渦構造が形成され,これがPeelingと呼ばれる渦度放出の原因となっていることが明らかにされた。現在の段階では,Head and Tailの構造は流れ方向の渦度成分の渦度集中によるものと推測されている。これを踏まえて,回転円筒の出口形状,回転持続時間,回転角速度,噴出流体のスラグ長をさまざまに組み合わせて,実験的にPeelingが抑制される条件を探した結果,次のことが分かった。回転円筒の出口形状については,同じ条件であればオリフィスの方がノズルよりPeelingが抑制されるが,レイノルズ数が高い場合に乱れ強さが大きくなることも分かった。回転持続時間については,渦輪の性質そのものへの影響はあまり変化しないものの,回転円筒が作り出す流れの影響が大きくなってしまうことが判明した。回転角速度は,予想通り小さいほどPeelingが抑えられる。噴出流体のスラグ長は,主として回転角速度とのバランスで抑制に最適な大きさが決定する。 2)数値シミュレーションの改善:Tailが渦輪の進行方向に長く伸び,流れ方向の周期境界の影響が僅かながらある。代表的な初期条件について再度計算を実施し,流れ方向の周期境界の影響の大きさを調査・確認した。 3)湾曲ブレード付ノズルによる軸流を伴う渦輪の実験:流体が噴出する際に旋回速度成分が加わるように湾曲ブレードをノズル内部に取り付け, 形成した渦輪の移動距離・速度を調査したところ,回転円筒を機構として持つノズルよりは劣るものの有意に流体輸送距離を伸ばすことができた。また,そのノズルを用いた渦輪列についても,回転円筒を機構として持つノズルと同じような効果が得られることを確かめた。
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