本研究の目的は、「数値航空機」、「数値自動車」等の概念を実現し、流体力学と運動力学との統合連成シミュレーションの理論を確立し実証することである。具体的には、3つある。ひとつは数値流体力学的な側面からの新しい試みとして静止流体中を物体(航空機や自動車)が自由自在に運動する場合の流れ場を解析する手法を確立することであり、二つ目は、高速旋回運動時の流体力学と運動力学(飛行力学等)とを練成させた統合運動シミュレーションの手法を確立することである。三つ目は、航空機でいえば、離陸から巡航状態そして着陸までの一連の統合運動力学(飛行力学)シミュレーション技術を確立することである。本研究課題は、そのアイデアの実証、即ち「仮想実機試験」システム構築のための基礎研究であり、前述の3つの目標を、順次達成する形で進める。主な具体項目は、1.「移動計算領域法」の手法の確立と検証、DESの導入、2.数値流体力学と運動力学との連成シミュレーション手法の確立、3.「数値航空機」及び「数値自動車」のプロトタイプモデルの作成と実証、4.「数値実機試験」の試み、の4項目となる。平成21年度は、特に項目1に関して研究を進めた。まず、移動計算領域法の改良・発展および非圧縮流への展開・定式化、検証計算等を行ない手法の確立を行った。この場合、流れ場の解析レベルとして、紙ヒコーキの滑空状態に対応した層流計算(DNS)レベルから、高レイノルズ数領域に対するレイノルズ平均方程式(RANS)レベル、そして大きな剥離領域を対象としてRANSとラージエディシミュレーション(LES)のハイブリッド型であるDetached Eddy Simulation(DES)レベルを考慮に入れ移動格子有限体積法に組み込むための定式化と計算プログラムの開発および検証を進めた。また、項目2の数値流体力学と運動力学との連成計算の定式化と実証計算の試みに着手した。
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