本研究の目的は、「数値航空機」、「数値自動車」等の概念を実現し、流体力学と運動力学との統合連成シミュレーションの理論を確立し実証することである。まず、数値流体力学的な側面からの新しい試みとして静止流体中を物体(航空機や自動車)が自由自在に運動する場合の流れ場を解析する手法として、移動計算領域法を提案し検証を行ってきた。平成22年度の成果として、圧縮性流体および非圧縮性流体について様々なケースについて検証を行い、数値航空機や数値自動車の基本数値計算法として確立することが出来た。高レイノルズ数領域に対するレイノルズ平均方程式(RANS)レベル、そして大きな剥離領域を対象としてRANSとラージエディシミュレーション(LES)のハイブリッド型計算手法の移動格子有限体積法に組み込むための定式化コードへの実装を終えた。今後、更に検証を進めロバストなコードを構成する。次に、流体力学と運動力学(飛行力学等)とを練成させた統合運動シミュレーションの手法を確立に向けては、旅客機モデルおよびMotoGPバイクマシンモデルを対象に運動方程式から数値流体力学への弱連成シミュレーション手法を確立した。また、クォータニオンの導入による移動格子変換の効率化について定式化と初期的評価を行った。旅客機モデルよりも運動性の高い場合についての数値航空機の実証モデルとして、競技用軽飛行機モデルを数値航空機の実証モデルとすることし、最終年度の流体力学と飛行力学統合連成シミュレーションに向けて競技用軽飛行機モデルに対するブロック構造格子形成を行い、巡航時の流れ場を確認した。
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