研究概要 |
コア流体部と円筒流体部から成る複合ジェットは,表面張力不安定によりコア部が円筒部によりカプセル化されることが知られている.この現象はスプレーや製薬などへの応用において重要であるが,最近より微小なカプセル形成が応用上必要とされており,微細化技術の向上が求められている.このような状況の下で,微小カプセル形成の成否に最も大きな影響を与える要因として,コア,円筒部界面での表面張力や粘性応力である.特に,表面張力の温度・濃度依存性(マランゴニー効果)や粘性のひずみ速度依存性(非ニュートン効果)がカプセル化に及ぼす影響を調べておくことは実用上重要である。本年度は,同程度の密度のコア,円筒部流体において非ニュートン粘性のカプセル化に及ぼす影響を明らかにした.これまでの解析により,コア部にピンチングがおこる近傍では,流量保存からコア流体速度が円筒部速度に比べて速くなり大きな速度差が現れる.しかし,流体粘性が大きくなると,界面での粘性応力のためコア部の流速が抑えられコア流体の閉塞現象がおこる.その結果上流部が大きく膨らむバルーニング現象が現れ,円筒部の破断が引き起こされる.このような現象に対する非ニュートン粘性の影響を明らかにするため,粘性をCarreauモデルで近似し,長波近似によるジェット方程式を導出し,数値解析により非ニュートン粘性の影響を調べた.その結果,ニュートン粘性ではバルーニングが現れる低レイノルズ数領域で,擬塑性流体の場合さらにその傾向は強められるが,ダイラタント流体の場合は反対に抑えられるという結果を得た.通常の高分子流体は擬塑性流体であるので,ニュートン粘性で予想されるよりもより強くバルーニングが現れ,カプセル化がより難しくなることが予想される.そのため,実際のカプセル生成ではパラメータの設定に注意を要する.
|